手術について
整形外科疾患について
「動物が正常に歩行する」というのは骨、靱帯、関節、筋肉、神経等が正しく機能して可能になるのですが、逆に「動物が正常に歩行できない」というのは、それらが正しく機能していないということになります。正しく機能していない原因には骨・関節の異常のほか、神経による異常、腫瘍による異常、免疫の異常その他たくさんあります。
骨や関節の病気は骨折だけではありません。もちろん不慮の事故による骨折も多くありますが、来院されるオーナー様の多くは、突然前肢や後肢が地面に着地できなくなり挙げている、着地はできても他の肢と比べ力が入っていない、体や腰がふらつくようになったなどと感じ、病院にいらっしゃいます。
こんな症状ありませんか?
1つでもあてはまれば、整形外科疾患の疑いがあります。
整形外科疾患では、早期発見、早期治療が必要です。
- 歩き方がぎこちない気がする。
- 散歩の時、歩く距離が短くなった。
- 散歩の時、歩く速度が遅くなった。
- 階段を登りたがらない/駆け上がらない。
- ジャンプしなくなった。
- 誰かが帰ってきてもお迎えに行かない。
- なんとなく元気がない。
- 横になっている時間が長くなった。
- 関節を触られるのを嫌がる。
犬種別なりやすい症例一覧
犬種によってなりやすい整形外科疾患があります。症状や治療法を知っていただくことで早期発見・早期治療が行えます。
◎:起こりやすい ○:時々見られる △:まれに見られる
※ただし、上記の評価は一般的なものであり、個体差が生じることをご理解ください
よくみられる病名一覧
- 環軸亜脱臼
- 環軸椎亜脱臼は、小型犬の幼年期(1歳未満程度)に起こる病気です。
頭部の回転運動を担っている環椎(第1頚椎)と軸椎(第2頚椎)関節の間で、靭帯の断裂や奇形などの要因で関節がズレることで、脊髄が圧迫され身体の痛みや四肢の麻痺などの症状が起こります。
- レッグペルテス病
- レッグペルテス病は、突然片方の足に発症して、強い痛みにより足を痛がり、後ろ足を引きずるなどの症状が現れます。大腿骨頭に血液の供給が不足して大腿骨が壊死・変形してしまうことが原因です。治療が遅れると、歩き方の異常が一生治らないなどの後遺症が残ってしまいます。投薬などでは一時的に症状を抑えることはできますが病気の進行は止めることはできません。最終的には外科手術により治療することが必要となります。
- 股関節脱臼
- 交通事故や落下事故などで、骨同士をつないでいる靭帯が切れて、大腿骨がくぼみから外れてしまうことで脱臼が起こります。大型犬の場合は先天性の原因もあります。
足を引きずっていたり、足を上げて歩いたりなどの症状が現れるため、飼主様側でも気づくことが多いです。
- 前十字靭帯断裂
- 前十字靭帯断裂は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結んでいる前十字靭帯が切れてしまう病気です。前十字靭帯は慢性的な人体の変性(加齢や関節炎などによって)や外傷によって断裂してしまいます。足を痛がり、歩きづらそうに後ろ足を上げたり、引きずったりするなどの症状が現れます。
- 脛骨異形成
- 脛骨が湾曲する病気は色々な呼び方があり、脛骨異形成、脛骨遠位内反症、足根内反症などがありますが、全て同じ病気を指します。原因は、脛骨遠位成長版障害(脛骨の一部の成長が止まってしまう)と言われています。湾曲の度合いによって飼い主様とともに治療方法(経過観察もしくは手術など)を決定します。
- 股関節形成不全
- 股関節形成不全は股関節の発育や成長に異常が見られる疾患です。骨と筋肉の成長にアンバランスが生じることで股関節は不安定になり、大腿骨の先端である骨頭が股関節の凹みにしっかりはまらなくなるため、股関節は常に亜脱臼の状態になってしまいます。
通常は両足同時に発症しますが、まれに片足だけに発症する例もあります。発症すると、関節が不安定になり、骨関節症などに繋がり、関節の炎症などがみられるようになります。 のために必要に応じて国内外の専門家との連携をとりながら最善の診断治療をご提供致します。
- 膝蓋骨脱臼
- 犬の膝蓋骨脱臼は、後ろ足の膝蓋骨(ひざの関節のお皿)が正常な位置からずれてしまうことで起こる病気です。足を痛がったり、引きずったりなどの症状が見られます。
原因としては先天性と後天性の両方に分けられます。先天性のものは出産時から膝関節周囲の筋肉や骨の形成異常や靭帯の付着部の異常などが存在することで、加齢とともにこれらの異常が進行して膝蓋骨の脱臼を招く結果になってしまいます。
- 肘関節形成不全
- 肘関節は上腕骨と前腕骨(橈骨と尺骨)の3本の骨により成り立っている複雑な関節です。
この3本の骨の内、1本または2本の骨の異常により発生すると考えられています。この中でも尺骨の上腕骨に対する関節面の異常が多くみられます。一般的に発症する原因はよく分かっていませんが、遺伝的な要因や3本の骨の成長スピードの違いが影響するといわれています。 腫瘍は良性・悪性と区別され、見た目で判断するのは困難です。様々な方法で腫瘍の治療を行っております。
整形外科疾患に向けて
当院では、様々な整形外科疾患に対応できるように、医療技術の研鑽、整形外科専用の医療機器の導入を行っています。
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整形外科用ドリル
整形外科手術に使用します。細やかな操作性により、難しい症例にも対応できます。
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Stryker CORE
骨折、椎間板ヘルニア、その他細部の手術等の繊細かつ緻密な整形外科にも対応することができます。
- アメリカ、ペンシルヴァニア大学で開発されたペンヒップ方式は、精度の高い股関節診断方法です。また生後4ヵ月以降から診断が可能なのも特徴です。
ペンヒップ方式の診断を受けるためには、ペンヒップ認定獣医師のいる病院でレントゲン撮影および読影が必要です。当院院長は、まだ日本国内では少ない認定獣医師のひとりです。